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(発行日 2025年12月15日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター
はじめに
税理士 坂部 達夫
「午前十時の映画祭」ってご存じですか?朝の“午前10時”に、往年の名作や名監督の作品を映画館の大スクリーンで観られるというコンセプトで、2010年にスタートした名作映画の再上映企画です。私はTOHOシネマズ錦糸町オリナスという映画館で観ています。2025年度(2025年4月から2026年3月)は25本がかかります(月に約2本)。11月はウエストサイド物語が上映されていました(12月はニューシネマパラダイス)。この映画は、アメリカ版「ロミオとジュリエット」ですが、「新作ダンスを舞台から街へ引き出したこと」と「人種差別や文化の相違による掛け違い」を扱ったことが現代にも通じるので名作古典なのでしょう。終わって拍手が起きたり、若い方の姿を見かけたりすると、ぜひ続けてほしい企画だと思います。
今月のトピックス
カスタマーハラスメントとその対応について |
税理士 坂部 達夫
1.カスタマーハラスメントの意味
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や利用者が事業者、その従業員に対して、社会通念上許容される範囲を超える理不尽な要求や暴言、脅迫的言動を行うことを指します。従来の接客業では「お客様は神様」という考え方が根強く、顧客からの過度な要求に対しても従業員が我慢することで問題が表面化しにくい状況がありました。
しかし近年、労働者のメンタルヘルスや安全配慮の重要性が高まり、従業員を不当な要求や暴力的言動から守ることが企業の責務として認識されるようになってきたのです。
カスハラは従業員に強い心理的ストレスを与えて離職の原因となるだけでなく、サービス品質や企業イメージにも悪影響を及ぼすため、組織として取り組む意義が大きいと言えます。
2.カスタマーハラスメント対応指針
制度面では、厚生労働省が2022年に策定した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が重要な指針となっています。このマニュアルでは、典型的なカスハラ事例や企業が整備すべき体制、相談対応の方法、警察との連携などが具体的に示されています。
現状ではカスハラ自体を直接規制する特別法は存在しませんが、労働安全衛生法やパワーハラスメント防止措置義務との関連から、従業員の安全と健康を守るために企業が適切な対策を講じることが求められています。そのため、企業としては、①カスハラに該当する行為を明確に定義した社内規程を作成すること、②トラブル発生時の対応フローを整備すること、③従業員に対する研修や相談窓口を設置すること、④悪質な事案に対しては警察や弁護士と連携することなどが重要になります。また、顧客に対してサービスの提供を拒否できる条件を合理性・安全性の観点から明確に示しておくことも必要です。
3.カスハラ対策の支援制度
カスハラ対策を実施するうえでは、国や地方自治体の制度の活用も有効です。国の制度では、独立行政法人 労働者健康安全機構の「産業保健事業」の各種サービスが従業員のメンタルヘルス対策や安全衛生体制の整備を目的としており、カスハラ対策の一部として活用できる場合があります。
また、東京都では、「東京都カスタマーハラスメント防止条例」の施行に伴い、令和7年4月1日以降に、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの整備に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を実施した都内中小企業等に対し、奨励金が支給されます(40万円)。これは、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの整備(注)に加え「録音・録画環境の整備」、「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」のいずれか1つに取り組むことにより申請できます(第三回申請受付期間は、原則として12月24日(水)までですが、4回目以降も継続される可能性があります)。東京都以外の自治体でも独自にカスハラ対策研修や相談窓口の整備を支援する補助金を設けている例があり、企業は自社の取組内容を整理したうえで最適な制度を選択することが望まれます。直接「カスタマーハラスメント対策専用」を掲げた補助金はまだ多くありませんが、職場環境改善や労働者保護の観点から利用できる制度は広がりつつあります。
(注)ひな形はダウンロードできます。
募集要項 | 【東京都】カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金 | 奨励金40万
4.企業文化の醸成
さらに、カスハラ対策を効果的に進めるためには、企業文化の見直しが欠かせません。「顧客最優先」という価値観のみを重視するのではなく、「従業員の尊厳と安全を守ることが企業の持続性を支える」という方針を経営層が明確に示し、組織全体に浸透させる必要があります。特に中小企業では、現場担当者が一人で問題を抱え込みやすい傾向があるため、経営者自身がカスハラのリスクと対策の重要性を理解し、従業員が安心して相談できる環境を整えることが重要です。
また、近年では社会のデジタル化に伴い、対面だけでなくオンライン上でのカスハラ行為も増加しています。SNSによる誹謗中傷、匿名の過度なクレーム、チャットサポートでの暴言など、従来とは異なる形態の問題が生まれています。そのため、企業はデジタル対応におけるガイドライン策定や専門家との連携、AIによるログ管理など、より広範な対策を検討する必要があります。
このように、カスタマーハラスメント対策は、従業員を守るだけでなく、企業のリスクマネジメントやブランド価値向上にも直結する重要な取り組みです。制度化の流れを踏まえつつ、補助金を適切に活用しながら、組織的かつ持続的に対策を進めていくことが求められます。
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私のオススメ 「 科学技術館 」
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先日、千代田区北の丸公園内にある科学技術館に行ってきた。飛行機好きの息子たっての希望で、[航空宇宙STEMワークショップ]に応募したためだ。サイエンスショーでは、テレビでおなじみの米村でんじろう先生が、飛行機の歴史やヒミツについて実験を通してわかやりすく解説してくれ、ワークショップではパイロットやキャビンクルー等の職業体験を通じて、楽しみながら科学や技術等を総合的に学ぶことができた。ちなみにSTEMとは、科学(Science)
、技術(Technology) 、工学(Engineering) 、数学(Mathematics)の頭文字をとったもの。各分野での学びを、実社会での問題発見・解決に結びつける横断的・創造的教育モデルなんだそう。
科学技術館は子供はもちろん大人も楽しみながら学べる施設です。また北の丸公園散策もできるので一石二鳥、おすすめです。
科学技術館
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あとがき
上位16名しか出場できない卓球の国際大会「WTTファイナルズ香港」、男子シングルスで張本智和が初優勝した。その前の卓球混合団体W杯もおもしろかった。張本美和や松島輝空のような若手の物怖じしない闘いぶりにも感動し、次の大会も非常に楽しみである。(喜志)