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(発行日 2019年5月8日) 編集・発行 株式会社 アサヒ・ビジネスセンター

はじめに


代表取締役・税理士  坂部 達夫

  経営を考えるときの重要な視点に会社の組織、その構成員に対する対応の在り方の問題があります。とりわけ、会社の業務執行を我が事のように考え、実行することを期待される役員がポイントになる。これは経営者であればどなたでも感じることです。 
 大企業であれば、その信用力と資金力で、優秀な人材の中から抜擢、さらには外部から招聘することができるでしょう。ところが、中小企業はそうはいかない。まして、創業の時などは、まずは家族、そして少ない社員の中から「専務、やってよ。」などと立ち上がってゆきます。とにかく、手近なところから、その資質・心根には片目をつぶり、引っ張り上げざるを得ないのです。そして、自分も精一杯動いているので、選抜した者を全面的に信頼し、任せざるをえない。ここで、経営者自身の自覚の醸成と感覚の鍛え上げが始まります。自分の思い通りになることはない、ただ、ひたすら現在の課題に必死に取り組むしかないのです。たとえ、信頼し任せた人間に裏切られても、それは、自分のやってきたことの結果として受け入れる。
 仏教の修行徳目に六波羅蜜というものがあり、その3番目に忍辱があります。受け入れて必死に耐える。世の中の経営者は、「運が良かっただけです」という言葉を使います。一般的に、運を良い意味で使いますが、「運」は本来無色透明のもの、経営者は逆運に忍辱し、乗り越えるべく自らのこととして捉える必要があるのです。

 

今月のトピックス

民事信託と遺留分


税理士 坂部 達夫
  

 

  本題である民事信託と遺留分に触れる前に、相続時の財産の分け方として一般的な方法である遺言と遺留分について説明し、その後本題に触れたいと思います。

 <遺言の効力と遺留分>
 自分の財産は自由に分け方を決めることができます。一定の要件を備えた遺言によって、誰にどの財産を相続させるかという意思表示をしておけば、死亡を機にその効力が生じます。この効力は法的な裏付けのあるものなので、遺産分割を行うにあたっては原則としてその内容に異議は認められません。かように要件を備えた遺言の効力は大きいものです。
 そのため妻子には一切財産を遺さず他人に財産を相続させるというような遺言も、形式的な要件を備えていれば有効となります。極端な例かもしれませんが、昨日まで仲の良かった夫婦や親子の間に些細な出来事で諍いが生じ、一時的に関係が悪化してしまうことはどこのご家庭でも有り得ることで、その時に書かれる遺言には妻子の名前が欠落しているかもしれません。その結果妻子に財産が遺されず、妻子の生活が成り立たなくなってしまうといったことも考えられます。そのような状況に陥らないよう、民法では妻や子などに法定相続分の2分の1の遺留分を認めています。これにより被相続人(亡くなった方)が妻や子に財産を遺さないといった内容の遺言があっても、妻や子が請求すれば法定相続分の2分の1までの財産は、遺言の内容にかかわらず相続することが可能となります。ただしこれは一定期間内に請求してはじめて認められる権利ですので、妻や子が遺留分の請求を行わなければ、財産は遺言の通りに分けられます。

<民事信託と遺留分>
 父親(委託者)が賃貸アパートを所有している状況で、その賃貸アパートの運用・管理・処分を長男(受託者)に依頼し、その運用等によって生じる利益は父親(受益者)に帰属するという契約を結ぶこと。これが民事信託の基本的な仕組みです。これは父親の認知症対策という面で、成年後見制度に代わる有効な仕組みではありますが、この契約の中で受益者である父親が死亡した場合に、次の受益者となる者を定めることで遺言と同等の効果を持たせることが可能です。これを遺言代用信託といいますが、このケースで父親の財産がこの賃貸アパート以外に無く、相続人は長男と長女の2名という状況で、父親の次の受益者を長男1人と定めてしまったと仮定します。この場合、長女が相続できる財産が存在しなくなってしまいますが、遺言ではなく民事信託によってこのような状況となった時に、長女が遺留分の請求を行ってそれが認められるのかどうか、認められるとしたら遺留分の金額をどうやって計算するのかが曖昧でした。

 ところが、平成30年9月12日に東京地裁の判決で、相続人からの遺留分の請求に関連する訴えから、信託契約の一部が公序良俗に反するとして無効とされました。詳細は省きますが、信託契約の一部に特定の相続人の遺留分に関する権利を無効化する意図があるとみなされ、その信託契約行為は公序良俗に反するため、契約の一部を無効とするという判決が下されました。またこの判決では受益権を収益還元法により評価した金額に基づいて遺留分の金額を計算していました。この判決は遺留分と信託とを結びつける初めての判決であり、各方面から注目を集めましたが、この判決で全てが明確になったわけではなく、信託と遺留分については曖昧な部分が多く存在しています。認知症対策や二次相続対策という点で、信託は成年後見制度や遺言よりも優れた点が多くある仕組みであるため、今多くの方が信託に関心を持たれ、多くの事業者が信託を商品としている状況ではあります。しかし遺留分の侵害により相続人間で争いが生じる、後から信託契約が無効とされるといったリスクが存在することから、信託契約を締結する時は他の相続人の遺留分を侵害していないかどうかという確認が必要と考えます。


私の部屋    「野球より・・」

 私は休みの日は家にいるよりも外出していることが多く、そのほうがリフレッシュできるタイプなのですが、最近はプロ野球が開幕し、応援しているチームの試合を観に球場へ行くのが楽しみの一つになっています。特に今の季節は気候が気持ちよく、デイゲームを屋外の球場でビール片手に観戦することがすごく贅沢に感じています。
 しかし野球を観にいっているはずなのですが、いつに間にか売り子さんに目がいってしまい、ビールを買うことが楽しみになっている自分もいます。
 楽しみ方は人それぞれあると思いますが、球場に行く目的が野球観戦よりも売り子さんからビールを買うことになりつつあることは反省したいです。

 

あとがき
 元号が令和となり最初のABCネットニュースです。お蔭様で平成9年より発行を開始しましたABCネットニュースも23年目を迎えました。これからも皆様に役立つ情報を毎月配信していきますのでどうぞ宜しくお願い致します。(小高)

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