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社外取締役と改正会社法

1.はじめに

 2014年6月に社外取締役選任を促進する改正会社法が成立し、2015年4月から施行される予定です。改正会社法が成立した時点で、既に東証一部上場企業1813社の内74%が社外取締役を選任しており、施行後は、ほとんどの上場企業で選任されると思われます。
 社外取締役は、当初は企業判断と主張していた経済界に対して、政府が法律によって導入を促進していきました。その背景と内容について、まとめてみます。


2.背景

 会社法改正の具体的な法案作成の動きは、民主党政権下の2010年に始まっています。同年4月の法制審議会の中で「我が国上場会社等のコーポレート・ガバナンスについては、内外の投資者等から強い懸念が示されており、このことが、日本株全体に対する市場評価を低下させる大きな要因となっている」、また「業務執行に対する監督機能の強化等の観点から、取締役の一定数・一定割合を(独立)社外取締役とすべきである」、という指摘がされています。

 その後2011年には、オリンパスや大王製紙などの大企業で不祥事が相次ぎ、コーポレート・ガバナンスのあり方が大きな社会問題になり、そのような中で、「社外取締役1人以上の義務付け」が議論されていました。しかし経団連は、各企業に任せるべきこととして強く反対し、最初の法案では削除されることになりました。それを引き継いだ自民党政権ではその扱いに苦慮しながらも、アベノミクスの成長戦略の中で、「企業の採算性を高めるために、コーポレート・ガバナンスの強化が不可欠」だとして、社外取締役の導入を促進するように指示が出されました。


3.事実上の義務化と経済界の動き

 経団連など経済界はそれでも反対し、成立した改正法では、社外取締役の選任義務化は見送られることになりました。ただし、選任しない上場企業等は株主総会で「置くことが相当でない理由」を説明することが義務付けられ、企業にとっては事実上の義務化になっています。
 社外取締役は、役員の2親等以内の親族や親会社の取締役を除外するなど要件を厳格化していますが、一方、過去10年間その会社の役員などを務めていなければ就任できるとしています。

 また同時に、「監査等委員会設置会社」制度を新設して、2人以上の社外取締役が過半数を占める「監査等委員会」を設けて経営をチェックする仕組みを選択できるようにし、社外取締役の選任によるコーポレート・ガバナンスの強化を促しています。
 このような背景で、施行前にもかかわらず2014年に開催された株主総会では、それまで反対していた経団連の主だった会社も、社外取締役の選任を決定しています。


4.社外取締役の役割

 日本取締役協会(コーポレート・ガバナンスを普及・啓蒙する経営者等で構成される一般社団法人)は、社外取締役の主な役割について、「(1)社外取締役・取締役会の主たる職務は、経営(業務執行)の意思決定ではなく、経営者(業務執行者)の「監督」である。(2)「監督」の中核は、経営者が策定した経営戦略・計画に照らして、その成果が妥当であったかを検証し、最終的には現在の経営者に経営を委ねることの是非について判断することである。」という提言を出しています。そしてこの監督機能を、「モニタリング・モデル」と言っています。


5.監査役との違い                             
 

 監査役は、経営のチェックをするという意味では、社外取締役と同じ性格をもっていますが、監査役がコンプライアンス(法令順守)という部分に重きをおいているのに対して、社外取締役は会社の事業に対する監督業務を主たる機能とすると考えられます。これは、企業の不祥事などにおいて従来の監査役が十分にその機能を果たしていないので、もっと強化するように海外も含めて市場から求められたということだと思われます。


6.最後に

 外部の人が会社を見て、それほど簡単に不祥事を見つけることができるとは思えませんが、役員会等で外部の客観的な意見を聞けるのは新鮮ですし、導入した多くの上場企業ではそのように評価しています。企業にとっては外圧で導入したものかもしれませんが、各企業が選んだメンバーを見ると、役員会の議論に興味がわいてきます。


                                     (伊藤 恒人)

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