耳寄り情報

中小企業のモデルケースとして

1.はじめに 

 アベノミクスによる景気回復がマスコミ等で報じられている今、その実感を得られている中小企業はごく少数かと思われます。好景気の経済波及効果が中小企業に到達するまでには長い月日がかかるのに対し、リーマンショック・東日本大震災・日中関係悪化など、悪い要素はすぐに業績に影響を及ぼす傾向があります。
 しかし、そんな中小企業を取り巻く過酷な環境の中、順調に売上を伸ばし毎期利益を出し続ける中小企業もあります。今回は私どもの関与先でありますC社をご紹介致します。
 C社は、とある地方でレストランを1店舗経営しています。飲食店にとって「立地条件」は大変重要な要素の1つですが、お店の周りを見てみますと、人口密度が高い訳でもなく都心からも離れていて、決して「良い立地条件」とは言えません。そのような環境にありながら、お店には連日のように遠方からのお客様がお見えになり、大変な賑わいを見せています。1店舗だけで3億円近い売上を計上し、毎期順調に利益を出し続けている経営の一端をご紹介致します。


2.経営者の姿勢

 中小企業にとって経営者の姿勢が会社全体を大きく左右します。労働力の担い手として職務をこなしながら、社会情勢を注視し、会社経営の舵取りをしなければなりません。C社の社長はシェフとして毎日朝から晩まで厨房で腕をふるい、休憩時間には庭の草木の手入れを行い、店休日には講演や料理講習会などで全国を飛び回っています。そういった社長の姿を見ている従業員にやる気が出ない訳がありません。お店は自然と活気づき、その雰囲気はお客様へも伝わり、相乗効果を生み出していくのです。

 こんな事がありました。C社には頻繁に仕入業者が出入りしています。日々の業務で多忙な従業員は、ついつい仕入業者の方に対して雑な対応をしてしまいました。そんな時、社長のカミナリが落ちます。「業者の方への感謝の気持ちを忘れるんじゃない!」と。人気店・繁盛店は仕入業者からすると大のお得意様。そんなお店で働く従業員は、ややもすると自分が偉くなったような錯覚に陥りがちですが、そんな時は社長が気持ちを引き締めます。仕入業者の方にも気持ちよく出入りしてもらいたい。会社対会社の関係のようでも、結局のところは、人と人との繋がりが一番重要なのです。


3.変化すること

 C社も他の中小企業と同様に、社会情勢の様々な変化によって影響を受けます。しかし、業績の悪化が外的要因だから仕方がないと、黙って指を咥えているような事はありません。

 お客様のニーズはどこにあるのか?自分たちに出来ることは何なのか?を常に考え、実行に移しているのです。
とある業界の関係者が接待としてC社を利用していましたが、業界全体の自主規制により、今後はお店を利用出来なくなりました。お店にとっては大打撃です。しかし、ここで発想の転換です。
 「お店にいらして頂くことが出来ないのなら、こちらからお持ちすればいいじゃないか。」と、お弁当を始めたのです。今までの業務の流れを変えるというのは大変な労力を伴います。しかし、あの時何もしなければ売上の減少は目に見えていたのを、見事にカバーしたのです。

 また、何年かに一度は改装を行ったり、お皿を買い換えたりと設備投資にも力をいれています。確かに出費はかさみますが、常連のお客様にも常に新鮮さを感じて頂けるよう変化し続けていることが、長期的にみると良い結果を出しているのです。現状のまま、何もしないでも利益を出し続ける会社など、ほとんど存在しないといっていいでしょう。時が流れ社会が動いているのだから、会社も変わっていかなければいけないのだと社長はいいます。


4.月次決算

 利益が見込まれるので節税対策をしたいけど、納税資金も必要になるので、どのくらい使っていいのか分からなくて困ったという経験はございませんか。
 C社の場合、月次決算を行っています。減価償却費の計上は勿論のこと、年払保険料や労働保険料などの特定の月だけに発生する費用も予め金額が分かっているので、毎月未払計上し、費用をならします。これによって月による販売管理費の変動を抑え、毎月の利益をきちんと把握します。そして、毎月の利益のうち40%を法人税等納税資金として専用口座に積み立てて、残りを利益積立口座に振替えます。また、毎月の仮受消費税等と仮払消費税等の差額を消費税等納税資金として専用口座に積み立てますので、納税資金の用意に慌てるようなことはありません。
 更には、売上用・経費用・借入返済用と目的ごとに口座を使い分けることによって、口座残高を見れば業績と資金状況のポイントが一目瞭然となり、月次決算が完了する前でも、大きな異常にはいち早く察知できるよう努めています。


5.事業承継


 多くの中小企業の経営者が事業承継には頭を悩まされていると思います。今まで築き上げてきた財産。それは設備や預金だけでなく、顧客・取引先との信頼関係やノウハウなど数字には表れないものも大変貴重な財産です。これを、いかにスムーズに後継者へと移譲させていくかが重要です。
 C社にはご長男がいらっしゃいます。早い時期に他の店で修行され今は社長と一緒に腕をふるわれています。古くからのお客様にも評判は良く、最近ではメディアにも多数出演し、新たなファンも獲得されているようです。まだまだ道のりは長いと思いますが、早いうちから後継者となるべき方が努力を重ねてこられたことは、C社の事業承継にとって大きなアドバンテージとなっています。
 また、事業承継は経営者だけではなく、会社に関わる全ての方々にとっても少なからず影響を及ぼします。したがって、お客様や従業員のみならず、会社に関わる全ての方々を大切に考える社長にとって、事業承継は重要なこととお考えなのだと思います。


 会社が成長する条件というのは様々ですが、共通して言えることは、まずは現状をしっかりと把握する事です。そうすることで、やるべきことに迅速に対応出来るのです。その為には、毎月きちんと業績が把握出来るような経理体制を構築し、経営者自身が数字に興味を持つことが必要不可欠となります。

 最後に、今回の掲載にあたりC社にご協力のお願いをしたところ「同じ中小企業の方々の何らかのお役に立てるのなら」と快くご承諾いただきました。誠にありがとうございました。

                                    ( 小高 誠和 )

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