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「中小企業金融円滑化法」の終了と「中小企業経営力強化支援法」の開始

1.中小企業金融円滑化法とは 

 2008年に発生したリーマンショックによる世界的な経済不況のなか、中小企業の資金繰りを支援して倒産を防ぐために「中小企業金融円滑化法」(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律、以下、円滑化法という)が、2009年12月に施行されました。円滑化法は、中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更等を行うよう努めることなどを内容とする法律です。当初は時限立法として2011年3月末で終了する予定でしたが、2011年3月に発生した東日本大震災等の影響により2回延長され、2013年3月に終了することになりました。


2.施行後の申請件数と問題点

 円滑化法の施行後、資金繰りに苦しい多くの中小企業は、返済猶予(リスケジュール)や金利引き下げの申込みをして、リスケジュール等が同法に基づいて認められました。金融庁の発表によると、2012年9月末までの申し込み件数は約369万件、金額は102兆円に達し、そのうち認可件数は343万件、金額は95兆円となっています。民間調査会社の調査では、全企業の8.2%にあたる32万社がこの円滑化法による条件変更等の申請を行ったという試算結果があります。

 申請の増加に伴って、貸付け条件の再変更等が増加しており、その際には、「経営改善計画の策定」が条件となっています。しかし、計画が策定されていない、計画は策定したが実行されていない、抜本的な経営改善への取り組みがなされていない、など計画策定およびその実行上の問題が多数発生しており、依然として厳しい経営状態という現実があります。


3.出口戦略政策パッケージ

 このような経過の中で、2013年3月の円滑化法終了後、中小企業の資金繰り悪化が懸念されるため、2012年4月に金融庁から、終了後に向けた以下の出口戦略のための政策パッケージが発表されました。

<出口戦略政策パッケージの概要>

(1)金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮
・中小企業に対する具体的な支援の方針や取組み状況等について集中的なヒアリング(「出口戦略ヒアリング」)を実施する。
・抜本的な事業再生、業種転換、事業承継等の支援が必要な場合には、判断を先送りせず外部機関等の第三者的な視点や専門的な知見を積極的に活用する。
(2)企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化
(3)その他経営改善・事業再生支援の環境整備


4.中小企業経営力強化支援法の成立

 上記の出口戦略政策を、法律によって支援するものとして、2012年6月に「中小企業経営力強化支援法」が成立しました。概要は以下の通りです。

(1)支援事業の担い手の多様化・活性化に対する支援措置
 既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等の中小企業の支援事業を行う者の認定を通じ、中小企業に対して専門性の高い支援事業を実現します。また、中小機構の専門家派遣等による協力や信用保証の付与による資金調達支援を通じ、支援事業を支援します。
 これらにより、中小企業は質の高い事業計画を策定することが可能となり、経営力の強化が図られます。

(2)海外展開に伴う資金調達に関する支援措置
 中小企業新事業活動促進法等に基づく承認又は認定を受けた計画に従って事業を行う中小企業者に対し、以下の措置を講じます。
・日本政策金融公庫の債務保証業務、日本貿易保険の保険業務を拡充し、中小企業の外国関係法人の海外現地金融機関からの資金調達を支援します。
・中小企業信用保険の保険限度額を増額し、親子ローン等を通じた海外展開を支援します。

 この法律よって、高い専門性を持ち、中小企業の経営改善を支援する公的な専門家の認定制度が創設され、認定された支援機関は「認定支援機関」あるいは「経営革新等支援機関」と呼ばれています。当事務所も、支援機関としての認定を受けています。
 認定支援機関の支援によって、補助金、保証料減額、税制の優遇措置などの公的支援を受けられることがありますので、積極的にご相談ご活用ください。

(文責  伊藤 恒人)

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